【スタッフコラム】灯は世代を越えて ~焚火台~
焚火の記憶
小さいころのキャンプの記憶はもう随分と薄れてしまったが、今でも脳裏に色濃く残る光景がある。
夏の夜、焚火を挟んで向かいに座る父。
インスタントコーヒーの入ったチタンマグを片手に持ち、もう片方の手には火のついた煙草。
煙草の細い煙と焚火の煙が空中で混ざっては暗闇に立ち消える。
辺りから聞こえてくるのは焚火台の中でパチパチと燃える火の音と、虫の声だけ。
そんな景色の中、焚火の灯に照らされながらコーヒーと煙草を交互に嗜む父の姿は、凛とした風格さえ感じさせた。
普段の父はおちゃらけていたずら好きで、お世辞にもかっこいいとは言えなかったが、
キャンプの夜だけは子供ながらにそう思えるのだった。
世代を越えるギア
小中学生の頃、父は毎年僕たち家族を連れてキャンプへと出かけた。
山に釣りにキャンプと、アウトドアの趣味を多く持つ父だった。
だから僕が大学生になったときに自分でもキャンプを始めたのは、ごくごく当たり前のことに思えた。
そんな人だったからか、僕がスノーピークに入社することを一番喜んでくれたのも父だったと思う。
大人になり、スノーピークスタッフとなった僕の手元には使い古した焚火台がある。
当時家族でキャンプに行っていた頃、父が買ったスノーピークの焚火台だ。
もう10年以上経っているが、変わらず堅実に火を起こしてくれている。
コーヒーを片手に焚火の前に座ると、あの記憶が蘇ってくる。
焚火の向こう側の父は何を思っていたのだろうか。
いずれ僕にも子供ができたとき、この焚火台を挟んで何を話すのだろうか。
しばらく一緒にはキャンプに行っていないが、久しぶりに誘ってみるのもいいかもしれない。
焚火の前でならそんな話もできるだろうから。
人生に野遊びを
長久手店スタッフ 石川